運動会の花形といわれる「組み体操」。
生徒が力と呼吸を合わせ、
一つの形を組み立てていく様は圧巻です。
一方で事故も発生し、
安全対策が見直されている種目でもあります。
今回の記事では「組み体操」について
取り上げてみたいと思います。
【組み体操の教育的視点】
組み体操は危険が伴う等、安全性の問題上、
採用している学校は減少傾向にあるとされています。
しかし、そんな現在こそ、
組体操がもたらす効果を見直そうという
文献が存在します。
『組体操の「共創空間」が生み出す教育的価値』
(川茂 著)では、
「組み体操が生み出す空間」に関する
研究テーマをまとめられています。
[組み体操の定義]
「組体操はパートナーエクササイズや
ペア・ギムナスティクス」といい、
二人以上の人が組んで行う体操を指し、
互いに力を貸したり、体重を利用し合ったり、
体のもつ特質・技術を提供し合うことにより、
一人では得られない効果を狙う体操」
だとされています。
また、スポーツが体育の教材として
多く取り入れられている現在体育は、
競争・競闘だけの場となり、
勝敗や記録の更新だけが優先される場
――になりやすい状態に。
しかし、人間の社会は
勝敗・闘争だけで成り立っているわけではなく、
集団による協力や協同・援助・連携・支えが必要。
このことを踏まえ、
組体操には、今の教育に必要な要素を多く含んでおり、
この要素を子供達に実感をさせることで
「組体操」という競技から人として大切なこと、
生きてゆく上での糧を得ることにも繋がる
と、しています。
[共創空間という言葉について]
この論文中に登場する「共創空間」に関しては、
組体操は、一人ではなく、
支えあいの中で、より良い効果を狙った体操であり、
必然的に相手との関わりが生まれ、
逆に関わりなくして組体操は成立しないことから
「一人では成し遂げられない」
という暗黙の了解が存在する。
この暗黙の了解が存在する空間内で
子供達は協力し合い、組体操を創り上げてゆく。
この空間を「共創空間」と名付けるとしています。
[暗黙の了解]
組体操において
「一人では成し遂げられない暗黙の了解」が
重要な要素であり、
また、この要素は子供達への
「関わりあい」「協力」「信頼感」等を
実感させる役割があるという見解があるようです。
【組み体操における事故】
独立行政法人日本スポーツ振興センターの資料を私が独自に整理・集計したところ、1983~2013年度の31年間に、学校の組体操において障害の残った事故が88件起きている(ここ10年分の事例のみ下表に示した)。
そして、各事例概要から判断できる限りで、ピラミッドが12件、タワーが41件【注】である。つまり、障害が残るような重大事故に関していうと、ピラミッドよりもタワーのほうが、事故が多く発生している。
(引用元:http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20150519-00045850/)
落下や崩壊による怪我のリスクは軽視できず、
重傷を負った場合、障がいが残る可能性も指摘されています。
また、事故後も継続して組み体操が行われていることを
問題視する声もあるようです。
教育現場における事故は
学校にとっても、保護者にとっても
「決して起こってはならない」
――という概念が根強く存在しています。
安全面での配慮に関して、
例として「肩車」では、
・一度に全員でさせない
・壁を背にして後に倒れない状況でさせる
・マット(できれば分厚いセーフティーマット)を敷いて前だおれしても怪我をしない環境を作る。
・子供に補助をさせるなら、2人を前後に補助につけるようにしましょう。横につけると、倒れそうになっても「見ているだけ」の時があります。
(引用元:https://edupedia.jp/article/53233f82059b682d585b5904)
といった配慮が必要だと提示されています。
また、近年においては、
「子供の身体能力の低下」
「コミュニケーションをとることが苦手」
といった事柄が挙げられることも多々あります。
【組み体操の技】
[一人技]
◇肩倒立◇
手で腰を支え、背中と床が直角になるようにし、
足をピンと伸ばします。
視線は足のつま先を向きます。
◇ブリッジ◇
足と手を近づけるようにすると、
きれいに形が作れます。
◇V字バランス◇
足をピンと伸ばし、視線はつま先へ。
腰・脇は直角になるようにします。
[二人技]
◇二人とんぼ◇
腰が曲がらないよう、真っ直ぐに上げ、
二人の足をくっつけ、顔は正面を向くようにします。
◇二人V字バランス◇
足の裏を合わせ、ひざを伸ばし、
両手は体の正面でつなぎます。
◇補助倒立◇
倒立を行う人は床を蹴り、
後ろに倒れこむ感覚で。
補助する人はひざ部分を持って
しっかりと受け止めましょう。
◇肩車◇
上に乗る人は、足を下になる人の背中へ回して
バランスをとるようにします。
◇ひねりサボテン◇
ひざに乗せる人は後方へ体重をかけ、
乗る人のひざ部分を支えます。
上に乗る人は体をそらし、
足をのばし、上体をひねります。
[三人以上]
◇飛行機◇
下の二人の間が開き過ぎないように。
後ろの人は上の人のひざを持って支えます。
上の人は体を真っ直ぐにするようにします。
上の人は足をしっかりと伸ばし、
三人とも手を伸ばして正面を見ます。
◇タワー◇
下の二人は肩を同じ高さにして
頭を上げないように。
上の人は下の人の首の付け根に足を乗せます。
[五人での技]
◇五人アーチ◇
肩車をして立ち、次に正面の人が倒立します。
次に左右の人が倒立を行います。
正面の人は背が高い人が良いでしょう。
◇三段ピラミッド◇
上の人は中の人の腰に手を当て、
飛び乗るようにします。
|その他の技|
[五人以上での技]
◇円形とんぼ(右)◇
しっかりと手を伸ばして、
足と上体を曲げないように。
顔は正面を見ます。
◇腕立て◇
右とんぼから腕立てをし、
左とんぼへ移ります。
体は真っ直ぐに。
◇円形とんぼ(左)◇
足を合わせ、手を真上にピンと伸ばします。
◇つぼみ◇
七人ほどで頭をよせ、肩倒立をします。
視線は足に向けます。
全員の足は同じように真上へ。
◇とりのす◇
二人V字バランスを組み合わせ、
足の裏を合わせます。
V字バランスの形が崩れないように。
【最後に】
安全配慮の優先か、
集団協力・連携教育か、
「教育現場」において、
どちらも重要なことだと考えます。
近年、体育に限らず、
食物アレルギーに対する給食の改善、
学習態度やしつけなど
教育現場に求められる事柄は
徐々に増加しているように感じます。
家庭と学校との境界線が曖昧になり、
家庭内で行われるはずの教育もが
学校側へと丸投げをされているのではないか
――そんな感覚が拭い切れないと考える次第です。
[参考元]南丹市立鶴ヶ岡小学校ホームページ
http://www.kyoto-be.ne.jp/turugaoka-es/cms/
|組み立て体操
http://www.kyoto-be.ne.jp/turugaoka-es/gakunen/kumitaisou/kumitaisou.html
|組み立て体操 part2
http://www.kyoto-be.ne.jp/turugaoka-es/gakunen/kumitaisou/goninwaza.html
【緊急提言】組体操は,やめたほうがよい。
子どものためにも,そして先生のためにも。▽組体操リスク(1)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140519-00035451/
|ピラミッドよりタワーが危険
組体操事故 障害事例の分析 ▽組体操リスク(7)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20150519-00045850/
|組体操が「危険」な理由―大人でも許されない高所の無防備作業
▽組体操リスク(2)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140523-00035592/
|四人同時骨折 それでも続く大ピラミッド
巨大化ストップの決断を ▽組体操リスク(4)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/20140919-00039223/
先生のための教育辞典「EDUPEDIA」
https://edupedia.jp/
|組体操のポイント
https://edupedia.jp/article/53233f82059b682d585b5904
「体育・保健体育」
『組体操の「共創空間」が生み出す教育的価値』|小川 茂 著
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